第82話
友季が支えてくれていたので、床に体をぶつけることはなかったが……
自分で立ち上がれないことに、舞はショックを受けた。
「鈴原……お前、凄い熱だぞ」
友季が舞の額に手を当てると、
「……気持ちいい」
先程まで氷を触っていた友季の手の冷たさに、舞はほぅっと溜息をついた。
「!」
その舞の表情に、友季の心臓がドクンと跳ねた。
「俺の手が気持ちいいって、やっぱり熱がある証拠だろ」
友季は呆れたように溜息をつく。
「上田さん。悪いけど、鈴原の着替え手伝ってやって」
友季のその言葉に、
「え?」
舞は慌てて友季の顔を見上げた。
「俺が家まで送るから、今日はもう休んでろ」
「あ、いえ。自分で帰れます」
今日は日曜日で、学校が休みの直人が家にいるかもしれない。
また友季に担ぎ込まれるところを見られたら、今度こそ険悪な空気になってしまう。
それだけは、避けなければ。
「自分で立ってられないヤツが、何言ってんだよ」
友季に殆ど引きずられるような形で更衣室へと連れて行かれ、
「じゃあ、上田さん、お願いね」
友季は部屋を出て行った。
舞は、気まずさと申し訳なさでいっぱいになりながらも、上田に着替えを手伝ってもらい、また友季に支えられて車に乗せてもらったところで、
「……」
ついに意識を手放した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます