第82話

友季が支えてくれていたので、床に体をぶつけることはなかったが……



自分で立ち上がれないことに、舞はショックを受けた。



「鈴原……お前、凄い熱だぞ」



友季が舞の額に手を当てると、



「……気持ちいい」



先程まで氷を触っていた友季の手の冷たさに、舞はほぅっと溜息をついた。



「!」



その舞の表情に、友季の心臓がドクンと跳ねた。



「俺の手が気持ちいいって、やっぱり熱がある証拠だろ」



友季は呆れたように溜息をつく。



「上田さん。悪いけど、鈴原の着替え手伝ってやって」



友季のその言葉に、



「え?」



舞は慌てて友季の顔を見上げた。



「俺が家まで送るから、今日はもう休んでろ」



「あ、いえ。自分で帰れます」



今日は日曜日で、学校が休みの直人が家にいるかもしれない。



また友季に担ぎ込まれるところを見られたら、今度こそ険悪な空気になってしまう。



それだけは、避けなければ。



「自分で立ってられないヤツが、何言ってんだよ」



友季に殆ど引きずられるような形で更衣室へと連れて行かれ、



「じゃあ、上田さん、お願いね」



友季は部屋を出て行った。



舞は、気まずさと申し訳なさでいっぱいになりながらも、上田に着替えを手伝ってもらい、また友季に支えられて車に乗せてもらったところで、



「……」



ついに意識を手放した。

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