第72話

一方、そんな友季に送り届けてもらった舞はというと――



「舞? 俺に何か言うことあるよな?」



「ご、ごめんなさい……」



リビングのローテーブルに、直人と向かい合うようにして座っていた。



直人は胡座あぐらをかいて、舞は正座をした状態で。



「酒に飲まれて店で寝るって何? しかも、知り合って間もない男の車に乗せられといて、家に着くまでの記憶がないって、どういうこと?」



「……えっと、どういうことかと言われても……今直人が言ったことそのままなんですけど」



舞はしゅんと項垂れた。



「職場の上司って言っても、相手は男なんだぞ? 意識のない状態で2人きりなんて……何されても文句言えねぇだろ!」



いつも穏やかな直人にしては珍しく、とんでもなく怒っている。



「で、でも実際、何もされてないし……!」



舞は慌てて反論したが、



「……前に、寝てる間に俺に何をされたかも覚えてないのに、そんなこと断言出来んの?」



直人の声が、突然低くなった。



「……え……?」



一旦立ち上がった直人が、怯える舞の目の前に座り直して、どんどんと迫ってくる。



両手の手首を掴まれて、強く引かれたかと思うと――



「……!?」



次の瞬間には、直人に唇を奪われていた。

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