第69話

そんなふざけた話を、友季は受け入れるつもりなど毛頭なかった。



だが、計画を進めていくうちに、どうしても経済的な問題でつまずいてしまい――



焦って血迷ったのか、友季は美和の提案を受け入れることにしてしまった。



借金を全額返済すれば、その“夜の遊び相手”もしなくていいと聞いていたから。



全額返済するまでの辛抱だと自分に言い聞かせて、今までを過ごしてきた。



だが――もうとっくに完済しているはずなのに、



「ねぇ、友季。早く来て」



何故か今、目の前の自分のベッドの上には美和がいて。



「……美和さん……約束と違います」



友季は一滴も酒を飲んでいないはずなのに頭痛を覚えて、右手でそっとこめかみを押さえた。



「この部屋の合鍵も、早く返して下さい」



「どうして? 私たち、恋人でしょう?」



ベッドから立ち上がった美和は、友季に正面から抱きつく。



「美和さんのことを好きになったことなんて、1秒たりともありません」



世話になっていた手前、美和を突き飛ばすことは出来なくて、言葉でのみ拒絶を示した。



「俺には、ずっと前から好きな人がいるので」



友季のそんな言葉に、



「……それ、初めて聞いたんだけど」



美和はムッとした。



「俺も、初めて言いました」



友季も負けじと美和を睨みつける。

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