第68話

そして、この美和という女性も、友季に急に優しくなった女のうちの1人だ。



痩せた友季が、本気で好みのタイプだったらしく、あの手この手でとにかく迫りまくってきた。



同じホテルで5年間勤め続けていたのだが――



とにかく女の豹変っぷりが怖かった友季は、6年目に突入する前に、ついにホテルを辞めてしまうことを決意。



技術も十分身に付けた。



経済的には……まだ少し不安があるが、これからもっと頑張ればいいと思っていた。



だから――自分の店を持とう、と。



不安よりも、ワクワクした気持ちの方が大きかった。



――退職願を提出した後で、それを聞きつけた美和が、友季の所に来てしまうまでは。



どうしても友季と離れたくないと考えていた美和は、友季が自分の店を持つための資金をどこかから借りようとしていることを聞きつけて、



「利息は要らない。期限も設けない。とにかく貸した分だけ返してくれればいいわ」



自分が、そのお金を一時的に貸すと名乗り出たのだ。



そんな美味しい話を、女性不信の友季が信じるはずもなく。



「……何が目的なんですか?」



して当然のその質問に、



「私の夜の遊び相手になって」



美和はあやしくも美しい笑みを浮かべて、そう告げた。

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