第67話

彼女の名は、中川なかがわ 美和みわ



年齢は友季より5つ上で今年36歳になる女性だが――



周りに噂されている通り、とんでもない美人である。



彼女は別に、友季の恋人だとかそういったものでは、全くない。



友季が美和と知り合ったのは、友季が1年制の専門学校を卒業してすぐの下積み時代だから、かれこれ11年前のことだ。



当時、某有名高級ホテルの厨房に勤めていた友季は――



実は、今とは随分と容姿が違っていた。



所謂いわゆるぽっちゃり系で、厨房内でもデブだの場所を取りすぎて邪魔だのと罵られる毎日を送っていた。



美和はホテル支配人の娘で、皆から罵られて虐められている友季を見ても、



「悔しかったら、そのお腹引っ込めてみれば?」



楽しそうに嘲笑うだけだった。



正直、すぐにでも辞めたいと思っていたが、高2の時に助けた小学生と交わした約束を、どうしても破りたくはなかった。



その約束だけを支えに、キツい仕事にも虐めにも耐えて、1年も経つと――



重労働とストレスにより、友季の体の贅肉ぜいにくは綺麗さっぱりと落ちていた。



この頃からイケメンと言われるようになり、それまで友季を虐めていた女性たちも、突然優しく接してくるようになった。



見た目で態度を変える女を心底怖いと思い、この頃から友季は女性恐怖症になってしまった。

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