第66話

「今日のロス品だけど……お前、食うか?」



言いながら、ビニール袋にひとまとめにされた甘夏マドレーヌのロス品を舞に差し出す。



本来なら、厨房から持ち出されることなくその日のうちに廃棄されてしまうもの。



舞が“捨てるなんて勿体ない”とぼやいているのを友季が聞いてしまい、なんとなく捨てられなくて持ってきてしまったものだった。



「いいんですか?」



「あぁ。また、ルームメイトと食べな」



舞のルームメイトがどんな子なのか、友季は全く知らないが、優しい笑みを浮かべた。



「ありがとうございます!」



嬉しそうに笑う舞の顔が見られただけで、



「ん」



今はまだ、このままでいいかと思えてしまう。



車から降りた舞が、アパートの階段を登り、玄関の扉の向こうに入っていくのを確認してから、



「よし」



友季は、車を発進させた。





――――……



自宅であるマンションに到着した友季は玄関の扉を開け、そこに1足だけぽつんと置かれている女物のパンプスを見て、



「……はぁー……」



大きな溜息をついた。



靴を脱ぎ、そのまま真っ直ぐに寝室へ向かうと、



「ん……? 友季、帰ったのー?」



友季のベッドで、勝手に堂々と寝ている女がいた。

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