第59話

「そう言えば、シェフって今おいくつなんですか?」



見た目がかなり若く見えるので、舞としてはそんなに年の差があるようには見えないのだが。



「……30歳。今年で31になる、立派なオッサンです」



完全に不貞ふて腐れた顔をしている友季が、吐き捨てるように答えた。



「見た感じもっとお若いのかと」



それはお世辞でも何でもなく舞の本心からの言葉だったのだが、



「……」



友季は、上田にオッサン呼ばわりされた時よりも更に深く落ち込んだ。



(やっぱり、20歳の子から見た30歳ってもう若くないのか……)



そんなことを考えながら、友季はグラスの中の烏龍茶をちびちびと飲む。



「ねぇねぇ。舞ちゃんってさ、彼氏とかいるの?」



初っ端からビールを一気飲みしていた山田は、もう既に酔いがまわっているのか、そんなことを言い出した。



“舞ちゃん”と呼び名が変わっていることに、



「……」



舞本人ではなく、友季が無言のまま眉間に皺を寄せた。



「えっ……いないです、いないです」



舞は慌てて胸の前で右手を振った。



「というか、そんなのいたことないです」



舞のそんな言葉に、



「……」



友季は険しかった表情を緩めて、目の前の舞の顔をじっと見つめる。

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