第47話

結局は直人の料理に舞が文句など言っていいわけがなくて、



「うん。凄く美味しいけどさ」



それを美味しく食べながら、



「でも何か私の、必要以上にキムチ多くない?」



じろりと直人を睨んだ。



舞の器の中には、直人のものよりも遥かに多く盛り付けられたキムチの山が。



「舞、キムチ好きだろ?」



「うん、まぁ好きだけど……」



一口でも食べてしまえば、もう量など関係なく臭くなってしまうので、舞は殆どヤケクソでガツガツと丼を頬張った。



そんな舞に、



「……舞ってさ……」



直人が、以前から舞に聞きたかったことを訊ねようと決意する。



「好きな人とかいるの?」



「え? 今はいないよ」



即答した舞の答えに、引っ掛かりを感じた直人は、



「前はいたの?」



間髪入れずに質問を重ねた。



「小学生の頃ね。今のところ、あれが最初で最後の恋かなぁ……」



懐かしむように遠い目をしている舞の向かい側で、



「……っ」



初めて聞かされた新事実に、直人は俯いて唇を噛み締める。



「え……どうしたの?」



明らかに様子のおかしい直人に、舞が恐る恐る声をかけた。



「いや、別に……その相手って、どんな人?」



舞の好みのタイプを知るチャンスだと思うことにして、直人は再び顔を上げた。

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