第46話
「仕事で何か辛いことでもあったの?」
ケーキ箱の蓋を閉じて、舞の方へとそっと歩み寄る。
「……シェフの考えてることが、よく分からないだけ」
舞は、思ったままをぽつりと零した。
「……そう思うってことは、そのシェフのこと、そんなに知りたいの?」
直人は、思わずムッとする。
舞の口から、他の男の話題など聞きたくはなかった。
けれど、そんな直人の心境にまるで気が付いていない舞は、
「シェフの人間性には、興味ないから」
何でもないことのようにさらりと答え、
「そっか……」
ムッとするのをやめた直人は、舞にバレないように、小さく安堵の溜息をついた。
「とりあえずさ、ご飯にしよ。今日は、ねぎ塩豚カルビ丼温玉キムチ添えを作ったから!」
気を取り直すように言った直人だったが、
「えっ!? 私、明日も仕事だから匂いの強いのはちょっと……」
舞は慌てて抗議した。
「いいじゃん、別に。スタミナもつくしさぁ!」
朝と夜の食事を直人に作ってもらっている身分としては、文句を言ってはいけないのかもしれないが、流石にこれは……
「皆に、この子クサイとか思われるのは辛い……」
項垂れる舞を見て、
(変な虫を追い払うには、やっぱりキムチが大事だよね)
直人は心の中でニヤリとほくそ笑んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます