第38話

「第一、今日のシェフは何だか様子がおかしいと思いますが」



「え? そう?」



「優しさを見せるなんて、気持ち悪くて見ていられません」



表情を全く変えずにさらりと上司をディスった上田に、



「……えっ? 悪口!?」



友季は驚いて目を見開いた。



「鈴原さんがシェフになびかないことに対して、物珍しく思う気持ちは分からなくもないですが……あまり行き過ぎた真似はしないで下さいね」



「行き過ぎた真似って?」



「口説いたりとかです」



ズバッ、ビシッと繰り広げられていく上田の話に、



「うげぇ……」



「うわぁ……」



「ひえぇー……」



男性社員3人組は、ヒヤヒヤしながら自分たちの仕事をこなしていた。



舞が友季にバシッと物申してから、上田も何だか友季に対して容赦がなくなった気がする。



今まで言いたいことを我慢していただけなのかもしれないが。



「俺がそんなことするわけないだろ!」



思わずムッとした友季に、



「シェフ……?」



店から戻ってきた舞が、きょとんとした表情を向けた。



「次は何をすればいいですか?」



“どうかしたんですか?”という質問が来るかと思っていたのに、舞から訊ねられたのは、次の指示だった。



友季のことに対しては本当に興味がないのだと、うかがい知れた。

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