第36話
大前提として何度でも言わせてもらうが、舞はこの友季の人間性が大嫌いである。
だがそれを差し引いても、お菓子を作っている時の友季だけは、とてつもなく格好良く見える。
働く男性は3割増で格好良く見えると言うが、舞から見た友季は10割増だ。
「鈴原。これ、ショーケースに出してきてくれ」
10割増の友季が、出来上がったばかりのミルクレープを、ショーケース用のトレーに並べて差し出してきた。
「あっ、はい」
慌ててトレーを受け取り、そこに載っているケーキ達を改めて見る――というより、見惚れる。
キラキラと輝いて見えるケーキを眺めていて、
「……」
舞はふと眉間に皺を寄せた。
「え? どうした?」
舞の表情の変化に気が付いた友季が、舞の顔を覗き込み、
「あ……いえ」
舞は慌てて首を横に振った。
幾重にも重なるクレープ生地見ていると、今朝、舞の手に自らの手をそっと重ねてきた直人のことを思い出してしまった。
あれは――あの触れ方は、姉弟や友達にしていい触れ方ではない。
あんな熱を帯びた眼差しで、壊れ物を扱うかのようなあの触れ方は……好きな人にする触れ方だ。
それを直人が舞にするのは、絶対に間違っている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます