第35話

舞の焼いたクレープの粗熱が取れてから、友季がミルクレープの仕上げに取り掛かる。



クレープ生地の上にホイップした生クリームを塗り、その上に薄くスライスしたスポンジケーキを載せて生クリームを塗る。



その上にクレープ生地を重ね、更にその上にカスタードクリームを塗り、またクレープ生地を重ね……という要領で、ひたすらクレープ生地を重ねていく。



途中、間に薄くスライスしたバナナ、チョコクリームなども挟まれていく。



そうして重ねていったクレープ生地は、最終的には丸いドーム型の塊となった。



素材の乾燥を防ぐために、1番上のクレープ生地の表面にナパージュを塗る。



つやつやに輝くそのドームを、今度は包丁で均一の大きさになるようにカットしていく。



他のケーキにするのと同じように側面にセロハンの帯を巻き、広げたアルミカップの上に載せて整えれば――



チョコバナナミルクレープの完成だ。



挟む時のバランスが大事なので、舞がやると、きっとこんな綺麗なドーム型にはならない。



カットする時も絶対にぐちゃっとなる自信がある。



相変わらずの鮮やかな手さばきと、全くと言っていい程に汚れていない作業台に、舞はただただ見惚れるしかなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る