第25話

舞の寝室は、洋風の襖でリビングとを隔てた隣にある。



ちなみに直人の部屋は、舞の部屋から見てリビングを挟んだ向かい側に位置している。



姉弟同然の身内とはいえ、年頃の男女がひとつ屋根の下で生活するので、この部屋探しには鈴原家と間宮家の両親の、細かいこだわりが詰まっていた。



家賃や生活費などのシビアな問題は、新社会人である舞が半分、残り半分は直人の両親が支払う約束になっている。



そんな新居の自分の部屋の引き戸を勢いよく開けると、



「あ……おはよう」



なんとなく、ぎこちない様子の直人が、リビングのローテーブルの上に2人分の朝食を用意しながら、挨拶をしてきた。



「うん、おはよ」



舞が意識しすぎているだけなのか、どうしても直人と目が合わない気がする。



変な夢を見たことが、直人にバレてしまったのだろうかと、不安になる。



「直人さ、昨日の夜のことなんだけど――」



舞をベッドに運んでくれたのかを訊こうと思って、そう切り出しただけなのに、



「!?」



途端にびくっと体を震わせた直人は、その反動で手にしていた味噌汁の椀をひっくり返してしまった。



「熱っ!」



「大丈夫!?」



舞は慌てて直人の手を掴み、台所へと引っ張った。



シンクの蛇口から水を流して、味噌汁のかかった直人の右手を冷やす。



舞と手が触れ合っている間中、



「……っ」



直人の顔は真っ赤に染まったままだった。

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