第26話

「何やってんのよ、もう!」



舞のとがめるようなその声に、



「舞がいきなり話しかけてくるからだろ!」



気まずさが爆発してしまった直人は、つい八つ当たりをしてしまった。



「直人が私をベッドに運んでくれたのかを訊こうとしただけじゃない!」



舞も、思わずムッとする。



「えっ……あ、そっち!?」



キョトンとする直人に、



「えっ? そっちじゃない方もあるの?」



舞も同じくキョトンとした。



そんな舞を見て、はっと我に返った直人は、



「あ、いや! ない! ないから!」



慌てて首を横に振った。



明らかに様子のおかしい直人を不審に思いつつ、



「もういいかな?」



冷やし続けていた直人の手を、そっと水から外した。



「確か、火傷に塗る薬があったはず……」



リビングの棚の引き出しの中から、救急箱を取り出す舞の手に、



「そこまでしなくても大丈夫だから」



濡れた手を拭いた直人が、冷やしていた方とは反対の手をそっと重ねた。



その触れ方が、どう見ても従姉弟同士でするような触れ方には見えなくて、



「……!」



鳥肌が立つ程の寒気を感じた舞は、咄嗟とっさにその手を振り払っていた。



「えっ……?」



明らかな拒絶反応に、直人は驚きで目を見開いたまま、舞を見つめる。

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