ミルクレープ

第23話

翌朝。



目覚まし時計のアラーム音が鳴り響き、舞は重たい瞼をゆっくりと開けた。



そこは、まだ引っ越してきたばかりで見慣れていない、けれど明らかに自分の寝室だと分かる景色で。



とりあえず、煩く鳴り響いているアラームを止める。



「……あれ?」



昨晩、風呂から上がった後、リビングで最近ハマっている漫画をスマホで読んで――



そこから、自分のベッドに移動した記憶が、全くない。



「……あれれ?」



もう一度よく思い出そうと口元に手をやり――



「……え……?」



ふと、まず起こりえないはずの記憶が蘇ってきた。



唇に優しく触れた熱の余韻と、



“舞……”



微かに耳に残る、直人の甘く切ない呼び声。



――直人に、キスをされた夢を見た気がする。



(……いやいやいや!)



舞は慌てて首を横に振った。



(ありえない! それは絶対にない!)



舞の母親には妹がいるのだが、その姉妹仲は親友かと思うくらいに良すぎる。



そんな母の妹には、息子と娘が1人ずついて、その息子こそが直人なのだ。



一人っ子である舞は、直人が生まれた時から一緒に過ごす時間が多く、それこそ姉弟のように育ってきた。



実の弟のように可愛がってきた直人と、従姉弟の関係である自分がそんなことをするなど――



想像しただけでも鳥肌が立つ。

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