第21話

直人が舞のことを好きだと自覚したのはもう随分と昔の子供の頃のことなので、いつからなのかとかは、はっきりとは覚えていない。



ただ、舞とは従姉弟同士なのだから諦めなくてはならないのだと、幼心にずっと感じていた。



けれど、成長するにつれて、いとこ同士でも結婚出来るという事実を知り――



直人の中で、舞に対する気持ちは日に日に大きくなっていった。



そんな矢先で決まった、舞の就職先。



テレビや雑誌でも引っ張りだこになっている、イケメンシェフパティシエのいる洋菓子店。



相手は舞より年上の雇い主で、自分は舞より2つ年下の学生で。



ただでさえ、舞からは異性として見られていないと自覚しているのに。



色恋事に興味も持たずに鈍感なまま成長した舞が、このイケメンパティシエに一目惚れをしてしまったらどうしようかと、内定の知らせを聞かされた時はめちゃくちゃに焦ったものだ。



だから、親同士が勝手にルームシェアの話を進めてしまったと知った時には、舞には悪いが、天の助けか何かかと思った。



慣れない仕事で疲れて帰ってきた舞に美味しい食事を用意して、傷付けられて帰ってきた時には、優しく抱き寄せて愚痴だって聞いてやろう、と思っていた。



自分のことを、ゆっくりと時間をかけて好きになってもらおうと思っていたのに……



だから、別に寝込みを襲うつもりなんて、全くなかったのに。

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