第20話

その舞の笑顔を見ながら、



「じゃあ、今日はもう早く寝ろよ」



直人は年下とは思えないアドバイスをした。



「うん、勿論!」



舞もそれを生意気だとか言わずに、素直に頷いてみせた。




――――……



「……舞? おーい」



食後、入浴を済ませた舞は、スマホを握り締めたまま、リビングのラグの上でクッションを枕代わりにしながら寝落ちしていた。



舞の後で入浴を済ませた直人がリビングに戻ると、既にこの状態になっていて――



「舞ー。こんな所で寝たら風邪ひくぞー」



舞の肩をゆさゆさと揺する。



が、一向に起きる気配がない。



舞の体を揺する度に、ふわりと苺の甘い香りが漂ってきた。



(苺の匂いって、風呂入っても取れねぇの!?)



今日一日だけで、一体どれ程大量の苺を扱ったのか直人には想像もつかなかったが――



この甘い香りは、直人の理性を奪うのには十分な効力があった。



「舞……?」



呼びかけて、反応がないことを再確認すると、



「……」



舞の唇に、自分の唇をそっと重ねた。



しばらくしてから、ゆっくりと唇を離し、慌てて舞の表情をうかがう。



「……」



舞は相変わらず静かな寝息を立てていて、



「……はぁ……」



直人はほっと安堵の溜息をついた。

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