第19話

そんな直人を、今日の仕事で自信をなくしかけていた舞は羨ましく思いながらも、



「うわっ! 何これ美味しい! 直人、天才じゃん!」



カレーのあまりの美味しさに、直人を褒めたたえた。



ガツガツとカレーを頬張る舞を、直人はしばらく黙って見ていたが、



「……で? 舞の就職先の松野シェフ……だっけ? の実物は、やっぱりイケメンだったのか?」



心なしか不機嫌そうな表情で、そんなことを切り出した。



「あぁ……確かにイケメンなんだろうけど、私はお菓子が美味しければそれでいいから」



またカレーを一口食べるために、舞は一旦言葉を区切った。



口の中のものをごくんと飲み込んでから、



「でもあまりに自信過剰な発言するから、自惚れんなって言っちゃって……」



今日のやらかしを鮮明に思い出して、しゅんと項垂れた。



「……舞って、昔っから心の声ダダ漏れるタイプだもんな」



簡単に想像出来てしまった直人は、両手で頭を抱えた。



「で? 初日でクビ?」



「その覚悟してたんだけど、何か明日も行っていいっぽい」



明日は7時出勤な、と帰り際に友季に声をかけられたから。



「7時か……早いな」



「この業界はどこもそんなもんでしょ」



舞はまたカレーを口に運び、その美味しさにまたしても、にんまりと笑う。

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