第15話
友季は更にそこへ、絞り袋に入れたホイップクリームで模様を描くように絞っていき――
その美しさに見惚れさせてくれる暇さえも与えられず、友季はその白く美しい塊に包丁を入れていく。
あっという間にショートケーキ1つ分のサイズに切り分けられたそれらに、
「おい。苺、寄越せ」
「あ、はい!」
舞がヘタ取りをした苺を載せ、ツヤ出しのためのナパージュが塗られる。
そして、その苺の隣にミントの葉が添えられた。
そうして出来たケーキを1切れずつ、セロハンの帯で側面を覆うように巻いていき、手で広げた銀色のアルミカップの上に載せる。
これで、パティスリー・トモの苺ショートケーキの完成だ。
ここまでの作業があまりに速すぎて、しかも仕上がりがあまりにも美しすぎて、
「……」
舞は友季のことが大嫌いだったことを忘れて、思わず見惚れてしまった程。
舞の視線に気付いた友季は、
「……やっぱり、お前、俺のこと――」
何かを言いかけたが、
「やっぱり、人格はともかく、お菓子の腕だけは尊敬します」
舞のそんな言葉に掻き消された。
「……そんなに俺が嫌いなら、辞めてくれて構わないんだぞ」
「いえ。オーナーのお菓子は好きなのでしばらくは続けさせて下さい」
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