第14話

心の中で悪態をつきながら、それでも手を休めずに友季の方を睨みつけると、



「あ……」



ただのスポンジケーキだったものが、友季の手によってどんどん綺麗に仕上げられていた。



鉄板サイズに焼かれた大きな長方形のスポンジの上にホイップクリームが広げられ、その上に均一の厚さにスライスされた苺が並べられていく。



その上にまたホイップクリームを塗り広げ、スポンジをもう1枚載せて、またホイップクリームと苺を載せる。



もう1枚スポンジを載せたところで、ケーキ全体にクリームを塗るナッペが施される。



このナッペという作業は、舞も練習に練習を重ねたので、同じ学校の同期生の中では一番上手に出来る自信があった。



だが、それは丸いケーキの場合のみ。



回転台という、その名の通りくるくる回転する台の上にケーキを置いて、クリームを塗っていくのだが……



鉄板サイズの四角いケーキを、一体どうやってナッペするのか。



興味のあった舞は、苺のヘタを取りながらその様子を見守っていた。



――のだが、友季の手際があまりにも良すぎるのと、舞が作業の合間を縫ってちらちらと覗き見ていただけなので、結局はどのようにして仕上げたのかまるで分からなかった。



気が付いた時には、美しすぎる白い四角い塊が鎮座していた。

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