第12話

小麦粉やグラニュー糖の入った袋は、1袋辺り20kgとか25kg入りだ。



それを原材料庫から厨房に運び込む作業だって、力の弱い女だから持ち上げられません、なんて言っていい世界ではない。



いずれは任せてもらえるであろう、カスタードクリームを炊く仕事だって、焦がさないように混ぜるだけでも相当な腕力が必要となる。



自宅で少量だけ作るのと、店で大量に生産するのとでは、規模も必要な力も全く比べ物にならないのだ。



そんなことは言われなくても分かっているし、手が小さいから力が弱いだなんて……



そんなの、偏見だ。



「……可愛げねぇな、お前」



友季は、今まで女性に睨まれたことがないのだろうか。



ムッとする舞の顔を見て、心底意外そうな顔をしている。



「この仕事に可愛げが必要だと言うのなら、頑張って明日までに身に付けてきますけど」



きっとこういう部分が、可愛げがないと言われる原因なのだろう。



分かってはいるが、直す気なんて正直なところ全くない。



「いや、面白いからそのままでいい」



何が楽しいのか、友季は突然ふわりと微笑わらった。



「!」



不機嫌そうだった美形の突然の柔らかい笑顔には、流石の舞も、不覚にもドキッとしてしまう。



そして、その胸のトキメキは、



「可愛げなんて要らねぇから、さっさと苺のヘタ取りして来い」



トキメキを与えてきた張本人の友季によって、いとも簡単にぶち壊された。

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