第11話

事務室の棚に置かれている救急箱を取り出した友季は、舞の傷口を消毒して、



「うん。そんなに深くは切ってないな」



小さく頷くと、救急箱の中をゴソゴソと漁る。



そして、



「あ……絆創膏切れてる」



空になっていた絆創膏の箱を面倒そうにゴミ箱に放り込んだ。



「後で買ってくるか」



言いながら、机の上に置いていた自分の鞄の中から、別のメーカーの絆創膏の箱を取り出した。



そこから取り出した1枚を舞の指に貼り――



舞は、デジャブでも見ているかのような感覚に陥った。



「いつも箱ごと持ち歩いてるんですか、それ」



思わず、そう訊ねていた。



「あぁ、まぁ……昔からの習慣っつーか……生傷の絶えないガキだったからな」



友季は絆創膏の箱を自分の鞄の中に戻すと、



「今日は怪我してる方の手にこれ付けとけ」



青色の薄手のゴム手袋(Sサイズ)を差し出してきた。



「そんな小せぇ手で、よくこの世界目指そうと思ったな」



手当てをしながら、舞の手に対してそんなことを思っていたとは。



「余計なお世話です」



パティシエの世界がキラキラした世界なんかではなく、力仕事でゴリゴリのマッチョになれてしまう世界であることなど、舞はとっくに知っているつもりだった。

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