第21話

そして、俺が恐れていた事件は、ある日突然に起こった。



ある休日の朝。



会社は休みだからと、俺は毎週恒例の朝寝坊をしようとしていた。



寝返りを打って、もう一度夢の世界へ旅立とうとした、その瞬間――




「きゃぁーー!」



隣で寝ていたはずの美姫が、突然悲鳴をあげた。



「どうした!?」



俺は、思わずガバッと飛び起きた。



そんな俺の目に飛び込んで来たのは、



「いや……やめて、来ないで!」



目には零れそうな程の涙を浮かべ、顔を恐怖で引きつらせて俺を見る美姫の姿。



――あぁ、ついにか……



そう思ってしまった自分は、案外冷静なのか、それともショックにより反応出来ないのか……



「……美姫」



思い出して欲しくて、優しく呼びかけた。



「やだ、怖い……だ、誰か助けて……!」



俺が差し伸べた手に、異常なまでの拒絶反応を示す美姫。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る