第16話
「美姫、今、何て……?」
そう問い返す俺は、血の気が引いていく音を聞いた気がした。
俺の目の前には、残業を終えて帰宅したばかりの美姫が立っている。
俺の額にはうっすらと冷や汗が浮かび、全身が凍えるように冷え切っていた。
かじかんだように震える手を何とか動かし、美姫の肩を両手で掴む。
「だから……」
答えながら、涙で潤んだ瞳で俺を見上げる美姫。
問い返したのは俺の方なのに、その答えを聞きたくないという気持ちが強まっていく。
「……私と、別れてって言ってるの……」
「……」
彼女が、俺と別れたがっている。
確かに昔、彼女が本気で嫌がらない限りは、彼女を絶対に離さないと、あの青空に誓った。
彼女が望むなら、俺は彼女の要求を受け入れなければならない。
彼女が望むなら……
でも、なんで、彼女は泣いているんだ……?
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