第12話

翌朝。



昨日の出来事は、夢だったんじゃないだろうか?



そう思えるくらい、美姫は元気だった。



5時に起きて、二人分の朝食と弁当を作り、洗濯物を干し、



7時になると、まだ寝ている俺を起こしに来てくれる。



そして、俺と2人で朝食を食べ、一緒に出掛ける準備をし、それぞれの職場へと出勤する。



いつもと同じ時間、同じ手順で生活をしている美姫が、記憶障害だなんてありえない。



昨日、ちらっと見たサイトには“料理の手順が分からなくなって作れなくなる”とか書いてあったけど、



やっぱり美姫の症状とは何かが違う。



きっと、美姫が病気だなんて何かの間違いだ。



そう何度も自分に言い聞かせることに必死で、



結局、俺は自分のことしか考えられていなかったのかもしれない。



彼女が密かに抱え込んでいた悩みに、なかなか気付いてやれなかったんだ……

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