第11話

病院から帰宅すると、美姫はいつものようにキッチンに立ち、夕飯の準備に取りかかる。



俺は、そんな彼女に



「持って帰ってきた仕事があるから」



と言い訳をして自室にこもった。



デスクに座り、パソコンを立ち上げる。



ネットに接続し、



『健忘症』


『若年性アルツハイマー型認知症』


『アリセプト』



今日、医師から聞いた専門用語を順番に画面に打ち込み、検索する。



難しい漢字やカタカナの羅列ばかりが画面を覆っていたが、どのサイトにも、



“画期的な治療法は見つかっていない”



という意味の言葉が書き連ねられていた。



しかも、今日挙げられた病気の症状と、美姫の症状は確かに似ているが、



似ているというだけで、ぴったりと当てはまるものは見つからなかった。



やっぱり、ただの天然ちゃんなのではないか?



そうであってほしいという気持ちでいっぱいになり、その日はもうパソコンの電源を落とした。

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