第9話
「ねぇ。私、そんなに物忘れひどかった?」
病院からの帰り道、彼女がぽつりと聞いてきた。
その時、彼女には内緒で、医師から告げられた言葉を思い出す。
“現在の医学では、アルツハイマーに対する特効薬や治療法はまだ開発されていません”
“アルツハイマーの初期段階では、本人にも物忘れの自覚はありますが――……”
“進行すると、自覚すらなくなってしまいます。
彼女の場合、もしかすると、初期と呼べる時期から逸してしまっているかもしれません”
“その場合、アリセプトの効果は期待できません”
効果が期待できない――……
それは、治療法の皆無を意味する。
そうなれば、美姫はいずれ、俺のことすらも――……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます