美姫は、元から少し抜けている所がある子だった。

俗に言う“天然キャラ”というヤツだ。

「あれ？私、今何しようとしてたっけ？」

なんて台詞は、彼女の口癖のようなもので……

そんな天然な部分が、彼女のことを守ってやりたい気持ちにさせ、可愛いとすら思っていた。

だから、彼女が忘れ物をしたり、方向音痴に悩まされていても、それも彼女の性格だと思っていたんだ。

けれど、おかしいと思い始めたのは、半年程前のこと。

彼女の忘れ物の回数が、異常に増え始めたのだ。

それは、ハンカチや弁当用の箸箱といった些細なものから、

雨が降っているのに、傘を持って行くのを忘れたり、

通勤に使っている自転車を、保育園に忘れて歩いて帰ってきたり……

“天然”では済まされないような、そんなありえない忘れ物をするようになってしまっていたんだ。

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