第7話

健忘症には、心因性と外傷性の二種類があるらしく、美姫の場合はおそらく心因性だろうと医師は言っていた。



実は、美姫には実の両親はいない。



美姫の父親は、美姫が小さい頃に病気で亡くなり、中学に上がる頃には、母親の再婚により、新しい父親が出来た。



しかし、この新しい父親というのが、かなり暴力的だったらしく、美姫が高校二年生の時、母親は美姫を残して姿を消した。



残された美姫は、毎日この義父から暴力を受け……



それでも、一応短大には進学させてもらえたようで、入学と同時に一人暮らしを始めたらしい。



その頃に、俺は日本に帰国してきて、美姫と再会したんだ。



久々に見た美姫は、全身がアザだらけで、かなりやつれていた。



俺と一緒に過ごすうちに、昔の明るさを取り戻したように見えていたけれど……



やっぱり、現実はそんなに甘くはないんだ。



無理をしていたツケが、今更になって回ってきたんだ。

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