第6話 ー 3
あれから、ひよちゃんも含めて他の人との交流を止めた。勿論あの男も。
この世界にも既に慣れた俺は、意外にも1人で難なく過ごせている。
〜♫
「ん?」
校舎裏のベンチに座って1人ボーッと過ごしていると、突然謎の音楽がこの世界全体に響き始めた。
優しいメロディの中に、どこか不安を覚えるような音も混ざっている。
不協和音とも違う。
だけど何だか、胸が温かくなるような。
泣きたくなるような。
寂しくなるような。
けれど、笑顔になるような。
何だ、この音楽。
湧き上がる沢山の感情が理解できないまま呆然と聴き入って居ると、俺の前をあの男が通り掛かった。
「あ、白崎くん。こんなところで何してるの」
「……ベンチに座ってちゃ悪いかよ」
「そんなことないよ」
「てか、何だよ。この音楽」
睨むように男の顔を眺めながら、率直な疑問をぶつける。
そんな俺の言葉に男は「おぉ!」と言いながら両手を叩き、流れるように俺の隣に座った。
「あ? どこか行くんじゃないのかよ」
「いや、そういや白崎くんは“誰かの卒業の日”を経験するのは初めてだからさ、少し説明しとこうかなぁ〜!」
「“卒業の日”……この音楽?」
「……そう。これはうちの校歌。……って皆には“教えて”いるけど、
だぁ、じゃねぇよ。
意味が分からない。
俺もこの世界に慣れてきて、前まで変だと思っていたことにすら慣れてきていたけれど。また意味不明なことが出てきたな。
「白崎くん、付いてくる?」
「は?」
「今回“卒業の日”を迎える人は、君も面識がある人だ」
「…………」
「実際に見た方が早いよ」
意味不明な男の言葉に小さく頷く。立ち上がった男に「こっち」と手招きをされ、俺は“卒業の日”が行われる場所へと向かった。
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