第6話 ー 2
「何でだろう。レントくんと居ると、凄く落ち着くんだ」
ある日の夕食後。
“ホーム”に戻るため校舎を出て庭を歩いていると、少し先を歩いていたひよちゃんと一緒になった。
2人で他愛のない会話をして、ふふっと笑い合っていると、突然ひよちゃんがそう言葉を零したのだ。
「あれじゃない、笑いのツボが似ているからじゃない?」
「……あ、確かに。いつも笑うタイミングが同じだなって、薄々感じてた。そういうことかも!」
ニコッと優しい笑顔を浮かべながら「ワタル先生が好きで、傍に居ると何だか落ち着く気がしつつ……でも何か違う気もしていたの。それの答えかも」なんて無邪気に言うから……。俺の中の嫉妬心がモクモクと湧き上がってくる。
「ひよ……ヒヨリさんは、ワタル先生のことが好きなの?」
「うーん……恋愛感情か分からないけれど、好きなのかな? てかあれだよ。リコちゃんとレイカちゃんもワタル先生のことが好きだよ。……だから、どうなんだろう?」
口元に手を当てて、少し首を傾げるひよちゃん。
そして、継がれた……言葉。
「私、“男の人とお付き合いをしたことが無いから、良く分かんない”や!」
「…………」
無邪気な笑顔が、悔しい。
そして湧き上がるあの男への怒り。
あいつがひよちゃんから記憶を除去したから……。俺のことを忘れさせたから……。
そんな怒りが涙となって溢れ零れる。
悔しくて辛くて、どうしようもない。
「え、レントくん。どうしたの!?」
「ごめん、ひよちゃん。先、戻るね」
「……ひ、“ひよちゃん”……?」
驚いた様子で立ち尽くしているひよちゃんを置いて、俺は走って“ホーム”へと戻って行った。
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