第5話 ー 2
食堂に着くと、さっき別れたはずの女子3人も居た。3人は俺ではなく男の方に駆け寄り、キャッキャと声を上げる。
ひよちゃんが俺以外の男に向かって微笑んでいる姿。これを目の前で見ること程、辛いことは無い。
「3人とも、僕らも一緒にここで食べても良いかな?」
「勿論!」
「ありがとう。じゃあレントくん、僕らも取りに行こうか」
「……おう」
2人だと俺のことを白崎と呼び、みんなの前だとレントと呼ぶ。ここでのルールなのか分からないけれど、何かそれにすら違和感を覚える。
「お、今日は僕の好きな【チキン南蛮】の日だ〜! テンション上がるね!」
「……ここの食事のメニューも、お前が好きなように“構築”してんじゃ無いのかよ」
「…………」
横目で俺を見て、静かに口元で人差し指を立てる。そうして「秘密」とだけ言って、また目の前のおかずの方を向いた。
そんな男の態度に苛立ちを覚えながら、俺は視線をひよちゃんの方に向ける。席に座って友達と楽しそうにご飯を食べているひよちゃんは、元の世界でも沢山の友達に囲まれて、いつもニコニコと笑っていたことを思い出した。
事故後、病院で”意思”だけあった時。
うちの親とひよちゃんの親が話しているのを聞いた。
葬儀には学年や性別を問わず、沢山の人が来たらしい。
それだけでどんな人物だったのかが良く分かる。
当たり前だけど、俺は参列出来なかった。
ひよちゃんらしい、沢山のお花に囲まれた明るい葬式。
それができて良かったと、ひよちゃんのお母さんは泣いていた。
「ほーら、レントくん。固まったら後ろが詰まっちゃうよ?」
「あ、ごめん」
ニヤッとしながらひよちゃんたちの席に向かう男。
俺も後ろの人に軽く頭を下げて、急いで先に進んだ。
そして美味しそうなおかずをお盆いっぱいに取って、俺もひよちゃんたちの席に向かうのだった。
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