第4話 ー 2

「——ひよりさんは……駄目でした」

「蓮斗くんも……時間の問題ですね」



 ピッ……ピッ……と音が鳴り響く静かな部屋。


 母親のすすり泣く声と、医者の消えそうな声が聞こえてくる。



 目が、開かない。

 というか、体も動かない。


 自分の“意思”はあるのに、どうやら“意識”は無いらしい。



 冷静になった俺は、“あの時何があったのか”を思い出していた。



 あの時……部活が終わって、ひよちゃんといつも通り帰っていた時、突然歩道に突っ込んできたワンボックスカーにかれたんだ。


 そのワンボックスカーは直前、信号無視をしていた。

 危ないなぁ……と思った矢先のことだった。


 ワンボックスカーの運転手がどういう状況だったのかは分からないけれど、とにかく痛くて、苦しくて、辛かった。



 少し離れた場所でうつ伏せになっていた、ひよちゃん。

 大切な人……。俺の大切な彼女、ひよちゃん。




 ひよちゃんは、即死だった。




 俺が先に死ねたら良かったのに。

 どうして、ひよちゃんが先に逝ってしまったの。




 どうして……どうして————……。

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