白崎蓮斗 — 第4話

第4話 ー 1

(side 白崎蓮斗)





 痛い、痛い痛い。

 全身が痛くて、まともに呼吸が出来なくて……苦しい。



 微かに見える、大切な人の姿。

 震える手を伸ばし……その人に触れようとするも、距離感すら分からない。



 ひよちゃん。

 うつ伏せのままピクリともしない、ひよちゃん。



 そんな所で寝ていたら、風邪引くよ。



「大丈夫ですか!?」

「誰か、AEDを持ってきて下さい!!」



 騒がしい周り。

 遠くから聞こえる救急車の音。



「こっち、男の子はまだ意識があるぞ!!」

「女の子は……」

「早く、こっちこっち!!」



 ……うるさい、痛い、苦しい。



 あれ、ひよちゃん。

 さっき……何を話していたっけ。

 この後の予定?

 カフェに行って……お絵描きの続きをするって言っていたっけ。


 そう言えば、美術コンテストがもうすぐだったよね。


 それに出す絵を描くんだったか。


 何だっけ?

 はすの花を描くんだっけ?


 俺の名前に『蓮』が入っているから?



 ……そう言っていたね。





 描けたら、絶対に見せてよ。




 ひよちゃん渾身の……蓮の花。

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