第3話 ー 3

「あ、おはよー! ヒヨリちゃん!」

「おはよ、リコちゃん。レイカちゃん」



 身支度を済ませ、教室に入った。

 私の姿を見たリコちゃんとレイカちゃんは、飛ぶように私の元へ来てくれる。



「ヒヨリちゃん、宿題やった? 数学のやつ!」

「もちろん。“昨日先生が言っていたじゃない。やらないと内申点下げるよって”」

「確かに言ってた……!! ヤバっ、ちょっと教えてよ!!」

「ふふ、“リコちゃんは相変わらずだね”」



 机の上に鞄を置き、中から数学の教科書と問題集を取り出す。



「……」



 そこで、ふと思った。


 “ワタル先生によると、昨日の私ってずっと寝ていたんじゃなかったっけ?”


 “授業を受けた記憶は無いのに、まるで受けたかのような記憶が鮮明に残っている”



「………」



 どういうこと?


 そう思いながらリコちゃんが開いている問題集のページを開く。まっさらなリコちゃんの問題集に対し、私の問題集にはきっちりと記入がされていた。しかも、“ちゃんと私の筆跡だ”。



「……ヒヨリちゃん? 大丈夫?」

「あっ……ごめん、ボーッとしてた!」



 不思議な現象に首を傾げる。何だか、何もかもがちぐはぐで、どことなく記憶が曖昧で、どれが正解かすら分からない。


 思わずポケットの中に手を入れる。その中で触れた謎のネクタイは、私に安心感を与えてくれるような気がした。

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