第92話

「梅ちゃんに変なことしたら、窓から突き落とすから」



「え、それ殺人……」



ドン引きする頼斗に、



「分かったわね!?」



姫花は人差し指を突き付けて睨むと、そのまま頼斗の部屋から出ていってしまった。



突然、部屋に希美と2人きりにされた頼斗は、



「あ……ここ座る?」



テンパりすぎて、希美にベッドに座ることを勧めてしまった。



そして、素直な性格の希美は、



「ありがとう」



そう言って、頼斗のすぐ隣にストンと腰を下ろした。



この至近距離で座ってみて初めて、



「……」



「……」



お互いに、気まずいことに気が付いた。



何故ベッドに座ることを勧めてしまったのか、頼斗は激しく後悔した。



後悔しながらも、すぐ隣の希美をちらりと見る。



白色のシンプルな長袖Tシャツに、ピンク色の花柄のショートパンツ姿の希美は、いつも見る制服姿とはまた違って見えて――



そのリラックスした姿が、とても可愛いと思った。



が、そのショートパンツから覗く太ももに、胸にあったのと同じ火傷の痕が左に2ヶ所、右に1ヶ所付けられているのを発見してしまった。



頼斗の視線に気付いた希美は、



「……やっぱり、気持ち悪いよね、これ」



悲しそうに俯いた。



「……」



頼斗は答えず、その希美の傷跡に指先でそっと優しく触れる。



途端に、希美がびくっと体を震わせた。



「き、桐生君……?」

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