第91話

頼斗のその返事に、



「……」



姫花は驚きで目を見開きながら絶句した。



その隣では、希美が黙ったまま頬を赤く染めている。



「梅ちゃん……あんなヤツ、やめときなって」



姫花は青ざめた顔で、希美の肩を掴んだ。



「!」



希美の肩の怪我を思い出した頼斗は慌てて希美の顔を見た。



が、姫花が掴んだのは怪我をした方とは反対の右肩だったので、



「……」



頼斗は密かにほっと胸を撫で下ろした。



その頼斗の様子に気付いていた希美は、



「桐生君、優しくて素敵な人だと思うけどな」



照れくさそうにはにかみながら、姫花にそう告げた。



「梅ちゃん、頼斗の日頃の行い一緒に見てたよね?」



「……」



過去の恋愛遍歴を引っ張り出されるのは流石に気まずくて、頼斗は黙ったまま俯いた。



「梅ちゃんが今の彼氏に悩まされてるのは分かったけど、だからって頼斗はオススメ出来ないよ! クズだよ!」



「でも、今はそういうの全然見かけないし……」



頼斗を信じている希美は、悲しそうに俯いてしまった。



「う……」



親友の悲しそうな表情に、流石の姫花もそれ以上は何も言えなくて。



その感情のやり場の矛先を、



「頼斗!」



頼斗へと向けた。

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