第84話

「え? どっちなのよ?」



希美は呆れたように頼斗を睨んだが、



「えっ?」



頼斗の顔が赤く染まっていることに気付いて、目を丸くした。



「桐生君……?」



「……眼鏡かけてない希美がめちゃくちゃ可愛いから……俺以外にも、希美のこと狙うヤツが出てくるかもしれねぇ」



「……」



今度は希美が、頼斗の真っ赤な顔をまじまじと見つめた。



誰もが見惚れてしまう程の、その整った顔をじーっと見つめながら、



「桐生君ってせっかくのイケメンなのに、物好きだよね」



思ったままをぽつり。



「……俺の顔と関係あるの? それ」



呆れた顔を向けてくる頼斗は、自身の顔がいいことを否定しない。



まぁ、否定されたところで嫌味にしか聞こえないので、それでいいのだが。



「私のことなんて、誰もいいとは思わないよ」



「俺がいいと思ってる」



真顔で自分の顔を指差す頼斗に、



「だから物好きだって言ってるの」



希美は溜息をついた。



「姫ちゃんくらいの美人だったら納得出来るけど」



「姫花? なんでアイツあんなモテるんだろうな? 同じ男として、何に惹かれてるのか意味分かんねぇよ」



姫花の名前を聞いた途端に、顔をしかめる頼斗。



それは多分、姉弟だからそう思うだけなのだろうけれど。



「俺は、希美が一番可愛いと思う」



頼斗にそんなことを言われて、嬉しくないわけがない。



「……ありがと」



希美は照れくさそうにはにかんだ。

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