第74話

「梅本……」



頼斗が目の前にいるのに、希美の瞳に映っているのは、あのクズ男だけ。



どうしても頼斗を見てくれない希美に、頼斗の胸はどんどん締め付けられていく。



(……苦しい……)



片想いがこんなに辛いものだったなんて、知らなかった。



「お前が、どうしたって俺を見てくれないのは分かった」



自分でそう言いながらも、その自分の言葉に深く傷付いた。



「でも……」



唯から受けた警告が、一瞬だけ脳裏をぎった。



これを破れば多分、もう希美との関係は修復出来ない。



分かっているのに――



急がば回れなんて、クソ喰らえだと思ってしまった。



「俺は、梅本のことがどうしようもなく好きだ」



「……!」



途端にびくっと震える希美の体。



「せっかく、友達としてこれから仲良くなりたいと思ってたけど……もう無理だ」



「……」



「梅本のこと、もう友達としてなんて見られない」



「……ごめんなさい……」



希美の瞳から、ポロポロと涙が零れ落ちる。



「……桐生君のこと、やっぱりそんな風に見られない……」



「……」



「……ごめん……本当にごめんね……」

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