第75話

ぐすぐすと泣きじゃくる希美に、



「……フラれてるのは俺の方なんだけど、なんで梅本が泣いてんの?」



頼斗は呆れた顔をした。



希美にそっと歩み寄り、指でその涙を優しく拭う。



「そんな風に泣かれたら、本当は俺のこと好きなのかもって期待するだろ」



そう言いつつも、頼斗は心の中ではしっかりと期待していた。



だって、そんなのは――顔を見ていれば分かるから。



「俺と付き合えない理由、ちゃんと話して。でないと俺、全然納得出来ないから」



「……」



希美はまだ涙の溢れる瞳で、ちらりと頼斗を見た。



頼斗の優しく真っ直ぐな眼差しに、



「!」



希美の胸はドキッと高鳴る。



「……桐生君、彼女よりもゲームとか漫画読む時間を優先するんでしょ?」



それは、校内では知らない者はいないと断言出来る程、有名な話だ。



「梅本が一番大事に決まってるだろ。最近じゃあ、ゲームも全くしてねぇし」



「どうして……」



「梅本のことを好きになってから、どうしてもゲームに集中出来なくなって」



そして、頼斗はニッと笑う。



「こんなこと、初めてだ」



「……!」



そんな頼斗の笑顔に、希美はドキドキが止まらなくなった。



「ねぇ。俺と付き合えない理由、ちゃんと聞かせて?」



涙を拭っていた頼斗の手が、希美の頬に優しく添えられる。



「……少し長くなるよ?」



「ん。大丈夫」



希美を見つめる頼斗の表情があまりにも優しいので、



「……実はね」



希美は話す決心をした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る