第71話

「梅本……そろそろ、俺……」



帰るよ、そう言おうとして、



――ガチャッ……



玄関の扉が開き、



「え? 誰?」



以前駅で見かけたことのある男が部屋に入ってきて、頼斗の姿を見て固まった。



「け、ケンちゃん!?」



希美の慌てた声が、頼斗にはやけに遠くに聞こえた気がした。



「婚約者とご飯に行くはずじゃ……」



希美の言葉に、



(……婚、約者……?)



頼斗は状況が掴めず、希美の顔を見た。



「ブスの顔見ながら食うメシなんて美味いわけないから、お茶だけで済ませて切り上げてきた」



賢祐はサラリと言い、



「で、コイツ誰?」



頼斗を指差した。



「……同じクラスの友達だよ」



別にやましいことなど何一つしていないので、希美は正直に答える。



「私が肩をケガしたから、ここまで鞄を運んでくれたの」



「ふーん……ただのクラスメイト相手に、随分と親切なお友達なんだな?」



賢祐は、頼斗の顔をじっと見据えた。



「随分なイケメン君だけど……のんちゃんを狙うなんて、見る目あるね」



そして、ニヤリと不気味な笑みを浮かべる。



「意外といい体してるでしょ、この子」



「なっ……!?」



とんでもない発言をした賢祐に、頼斗は驚いて目を見開いた。

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