第69話

希美を無事に家まで送り届けた頼斗は、



「お邪魔します……」



本当に希美の部屋にお邪魔していた。



淡いピンク色で統一された室内は、女の子の部屋という感じがして、



「……」



頼斗をそわそわとさせた。



「適当に座ってて。あ……コーヒーしかないんだけど、桐生君、平気?」



希美の言葉に、



「あ、うん……」



頼斗は戸惑いながらも頷いた。



桐生家は家族全員が紅茶派で、コーヒーなんて飲み慣れてはいないが、そんなことは恥ずかしくて言えなかった。



「どうぞ」



出されたマグカップに、



「ありがとう」



頼斗は角砂糖を4つ、ぽちゃんぽちゃんと放り込んだ。



その様子を、希美は驚いた表情で眺めた。



「……桐生君って、甘いもの好きなの?」



その希美の質問で、頼斗はハッと我に返る。



(しまった……格好悪いとこ見られた……)



頼斗はそう思ったが、もう遅い。



「うん、まぁ結構好きかな……パンケーキとかパフェもよく食べるし」



「私も好き」



そう言ってはにかむ希美に、



「!」



頼斗はドキッとした。



別に、今の“好き”は頼斗に対してではなく、甘いものに対してなのに。



それでも、希美の“好き”には十分な破壊力があった。

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