第67話

だが、そこでふと気付く。



(……あれ? そういえば、最近、俺……)



――全くゲームしてねぇな、と。



思い返せば、希美のことが気になり出して以来、全くしていない。



ゲームどころではなかったのだ。



「……頼斗。もしかして梅本さんと帰るつもりなのか?」



そう問いかける唯の目は、



『また急いで先走りすぎじゃないか?』



とでも言いたげだった。



「……梅本の鞄を家まで運ぶだけだから」



頼斗は、唯から目を逸らしてそう答えた。



「……梅本さんの彼氏さんを誤解させるようなことするなよ」



唯の嫌な予感は大抵が当たってしまうので、頼斗には強く念押ししておく。



「……分かってるよ」



希美の彼氏の存在を無理矢理思い出させられて、頼斗の胸はまたズキリと痛んだ。



「あ、今日は用事があるって言ってたから、家には来ないよ」



賢祐は今日は婚約者と食事の予定だと言っていた。



だから別に、希美だって男友達と一緒に帰るくらいしてもいいんじゃないかと、そう思ってしまっただけで。



それに、賢祐は多分、希美が浮気をしたとしても、怒ったりはしないと思う。



希美のことを、本当に愛してはいないから。

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