第61話

頼斗が唯に恋愛相談をしたその翌朝。



「梅本、おはよ」



「あっ……お、おはよう」



いつも通りに頼斗の後から登校してきた希美に声をかけると、希美はびくっと体を震わせた。



頼斗が希美に交際を迫ってしまったあの日以来、希美は頼斗に対してよそよそしい態度を取るようになっていた。



「……っ」



希美の怯えたような表情と態度に、頼斗の胸がズキッと痛む。



希美のことを好きだと自覚してしまった今となっては、その痛みは半端なく酷い。



それでも、今はその感情を抑え込まなくてはいけない。



「なぁ、梅本。俺と連絡先交換してくれよ」



勇気を振り絞って、そう切り出した。



女の子に連絡先を聞くことが、こんなにも緊張するものだったなんて、この時になって初めて知った。



「えっ……なんで?」



相変わらず警戒心の強い希美に、



「せっかく隣の席になったんだから、仲良くなりたくて」



頼斗は優しい笑顔を向けた。



「……いいけど」



希美はブレザーのポケットからスマホを取り出して操作すると、頼斗の方へと向ける。



そこに表示されているQRコードを、頼斗は慌てて自分のスマホで読み取った。

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