第60話

「まずは普通に梅本さんと仲良くならないと」



「!」



「友達ですらないのに、いきなり告白したって、そりゃあ相手はびっくりするだろ」



「……」



今までモテすぎていた頼斗には、その発想が全くなかった。



――というか、頼斗自身がよく知らない子から告白されるというのが当たり前すぎたので、そういう常識を持ち合わせていなかった。



「急がば回れって言葉を知らないのか?」



唯の呆れたような声に、



「それくらい知ってる」



頼斗は思わずムッとした。



「頼斗は本当は優しくていいヤツなんだから、焦らなければ梅本さんとも仲良くなれるだろ」



「……」



“本当は”という言い方が気になったが、自分の普段の行いが最低だったと自覚出来ている頼斗は、何も言わなかった。



「同じクラスで、しかも隣の席なんだろ? こんなチャンス、他にないだろ」



唯の言うことは、いつでも正しい。



だからこそ、こうして相談に来てしまう。



「そうだな……頑張ってみる」



頼斗は素直に頷いた。



「ありがとな、唯」



唯に相談して、やっぱり良かった。



「いや、俺は初恋に戸惑って、空振りして焦ってるお前を見てるのが面白いだけだから」



「……今の礼、やっぱ取り消す」



唯に相談したのは、やはり間違いだったのかもしれないと、頼斗は少しだけ後悔した。

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