第59話

「ちょっと確認したいんだけど」



唯はふと真剣な表情を見せた。



「頼斗は、梅本さんを彼氏から奪うつもりでいるってことなんだな?」



その人聞きの悪い言い方に、頼斗は初めて自分のしていることに気が付いた。



「……俺、梅本の恋愛の邪魔をしてるのか……?」



その事実に、思わず俯いた。



ただ希美を守りたいと思っての行動だったのに。



希美の笑顔が見たかっただけなのに。



でもそれは、遠くから見ていたいわけではなく――



自分のすぐ隣で笑っていて欲しいだけなのだと、気が付いた。



そして、それが独りよがりで酷く自分勝手な感情なのだということにも。



「お前がしようとしているのは、梅本さんの幸せを壊すってことになるんだぞ」



「……っ」



そんなつもりじゃなかったなんて、言い訳にしかならない。



でも、



「……梅本にあんな悲しい顔をさせる奴の隣に、あいつを行かせたくない」



それが根底にある限り、きっと頼斗は希美の邪魔をやめることは出来ない。



「……梅本さんの抱えてる事情は俺にも分からないけど」



唯は、ふぅ、と溜息をついた。



「頼斗が本気で梅本さんを幸せにしたいって思ってるなら……」



「?」



頼斗は俯けていた顔を上げて唯を見る。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る