急がば回れ

第55話

学級委員長会議のあった日から数日経ったある日の放課後。



「なぁ、唯」



頼斗は、また唯の部屋に遊びに来ていた。



今日は、いつもと違ってゲームはしていない。



テレビの前で、報道番組を見るでもなく見ていた頼斗は、ローテーブルの上で宿題をしている唯を振り返った。



「何?」



唯はシャーペンを持つ手を止めることなく、視線は教科書に落としたまま返事をして――



「両想いって、どうやったらなれんの?」



そんな頼斗の言葉に、唯はペンを動かす手をピタリと止めた。



「……」



ゆっくりと顔を上げて、頼斗の顔を見る。



恐ろしい程までに整ったその顔は真剣そのもので、真っ直ぐに唯の目を見つめてくる。



「校内一のイケメンが、俺にそれを聞くの?」



唯は呆れた表情をしてみせた。



「こっちは、最近姫花が冷たくて悩んでるのに……」



毎日唯と一緒に宿題をしていた姫花が、最近では全くと言っていい程、唯と会わなくなっていた。



でも、それは、



「唯の大学受験が終わるまで邪魔になりたくないって、姫花がこの間話してたろ」



受験生である唯を、姫花なりに気遣ってのことだ。



「分かってるけど……姫花に会いたい……」



唯はしゅんと項垂れた。



「俺はお前がすげー羨ましいよ」



しょぼくれている唯を見て、頼斗は溜息をつく。

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