第54話

賢祐といい、頼斗といい、きっと男なんて皆そんなものなんだと思う以外に、希美を納得させてくれるものはない。



また一人ぼっちになるよりは、今の状況の方がいいとも思うので、希美から何か行動を起こそうとも思わない。



どうしようもないのだ。



そう自分に言い聞かせながら、



それでも思い出すのは、今日、クラスの女子たちから庇ってくれた時の頼斗の横顔。



希美に交際を迫ってきた時の真剣な表情の頼斗。



抱き締められた時の、あの力強い腕の優しい温もり。



頭の中が、もう既に頼斗でいっぱいになってしまっている。



どうすればいいのか、希美にはもう分からない。



自分が本当はどうしたいのかなんて――



そんなことを考える勇気を、希美は持ち合わせてはいない。



どうすることも出来なくて、



「……うっ……ぐすっ……」



希美は布団に顔を埋めて、声を押し殺して泣いた。

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