第53話

(桐生君にとっては、恋愛もゲームみたいなものなのかな……)



ゲームオタクで有名な彼。



きっと、落とせたら勝ち、ぐらいにしか思っていないのだろう。



そんなゲームのこまにされるなど、真っ平だ。



そう思うのに、



「……」



希美のタイプかどうかは置いておいて、頼斗は誰の目から見てもとても魅力的な男性で。



そんな彼に大切そうに扱われて、心が揺らがないわけがない。



頼斗を好きになりそうな瞬間が、いくつもあったのも事実。



彼が女の子から告白されたという話はよく聞くけれど、彼の方から告白したというのは聞いたことがなくて。



もしかして、本当に自分は彼にとって特別なのでは? なんて思ってしまう。



そこまで考えて、



「……」



いや、やっぱりそれはないな、という考えに至った。



すぐ隣で眠る賢祐の寝顔を、改めてじっくりと見てみる。



来年、他の女性と結婚してしまう彼。



それでも、希美と別れるつもりはないと今日もこうして希美を抱くためだけに家にやって来て。



用が済めば、希美のことなんかそっちのけで1人で眠っていて――



この男と一緒にいるメリットなんて、何もないのに。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る