第52話

(いきなり、何なのよ……)



希美は、ベッドの中で1人悶々と悩んでいた。



希美のすぐ隣では、裸の賢祐が気持ち良さそうな寝息を立てている。



そんな賢祐を起こさないように注意しながら、



「はぁ……」



希美は小さく溜息をついた。



賢祐に抱かれている間も、希美は頼斗に抱き締められた時の体温を思い出してしまい、目の前の賢祐をきちんと見ていなかった。



――もっとも、賢祐は希美の気持ちなど完全に無視しているので、賢祐に対しての罪悪感なども全く感じなかったが。



こんな愛のない時間を過ごすなんて無駄だとは思う。



でも、だからと言って、賢祐と別れて頼斗と付き合い始めたところで――



(どうせ、すぐに飽きられて捨てられるんだろうな……)



そんなオチが見えているので、頼斗と付き合いたいなどとは全く思わない。



頼斗に興味を示さない希美が、きっと彼の目には新鮮に映っているだけなのだ。



だから、希美が頼斗のことを好きになれば、きっと一気に冷められるに決まっている。



今は希美がなかなか落ちないから、面白がっているだけなのだ。

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